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立つ鳥跡を…【長文必至!ご注意下さい】 [MAMA]

とうとう母が引退した。

こう言ってはなんだが、私の最も恐れていた日が来てしまったわけだ。
前にも書いたけど、ウチは母ひとり子ひとりなので、母がひとりで私を育ててきたように、
これからは私がひとりで母の面倒をみていくことになるのだ。
詳細はすっとばすが、私は年齢に見合った、いわゆる「安定した生活」を送ってる人間ではない。
こんな未来を予測していたのか、母は自分の老後をガッチリ見据えてきたタイプの人なので、取り急ぎ私が何かをするという必要はなさそうである。できた母親をもって幸せだ。

「立つ鳥跡を濁さず」というが、それは母にはあまり関係ない言葉のようだ。
かといって「後足で砂をかける」ということではもちろんないのだが…。

母は前職を退職したのち、神田にある某蕎麦屋でパート勤めをしていた。
契約期間は来年の3月いっぱいであった。
だが、ある夏の日、母が突然
『ママ、10月いっぱいで辞めるから』
と言ってきた。母は70まで働く!と豪語していた人間だ。それは無理だろうが、あと半年で引退なのに。
「どうして?あとちょっとなのに…」
というと、
『だって、年末は大変だから、もうやだ』
と言うのである。
そう、蕎麦屋は「年越しそば」というイベントにより、12月31日の夜遅くまで営業している。
母の仕事は店の裏方、つまり「まかない」で、しかもその「補助」という、たぶん一番楽であろうポジションだった。だが母が言うには、年末に向けて通常の営業時より増員され、まかないの仕事量は2倍にも3倍にもなるのだという。

このへんが母と私の違うところ。
私なら「最後のご奉公」と思って、がんばると思う。たとえ、いやでも、だ。
でも、母はあと少しならいいか、という感じで熱が冷め、面倒になってしまうタチのようだった。

しかも、すでに事後報告。お店にはもう言ってしまった後だし、母の人生だ。
「好きなようにすればいいよ」と求められてもいないがとりあえずコメントしておいた。
そういやこのヒト、前職の正社員で働いていた会社を58歳で退職したんだった。
やっぱり、事後報告で。この時は相当たまげたけどね。そしてやっぱり言ったよ。
「あとちょっとで定年なのに」って。
もちろん、理由はあった。勤務地が変わり通勤時間が片道30分増えたし、年のせいで膝も悪くした。
辞めると言い出した時には治っていたが、母は思い込みが激しく、せっかちなのだ。
さすがに、利にさとい母のこと、退職金の違いについてはしっかり計算済みではあったけどね(笑)
さて、それはさておき、
そして、10月も終わりに近くなったある日、「あと2日になった」と母と電話で話した。
私は公私ともに忙しくしてたし、すぐに報告の電話をかけてくるだろうと、こちらからは連絡しなかった。
でも、11月になっても全然電話がこない。ちょっと「あれ?」とは思ったが、残業やら発熱やらで放置してしまった。やっと、連絡が来たのは11月3日になってからだった。

「ごめんね。ママの最後の日だったのに連絡もしないで。どうだった?」と聞くと、
『ママ、行ってないの』
「え?」
『最後の2日、休んじゃったのよ~あはは~』
「えー!なんで?ってか、あと2日って電話で話したっきりってこと?」
『そう』

聞けば、電話で話した翌日、朝起きたらとても気分が悪かったのだという。日曜だったし、めまいもしたので病院にも行かず寝ていたのだと。

「ええっ?大丈夫なの?どっか悪かったの?」
『わかんない。夜にはすっかり治っちゃったのよ~』
「じゃあ、最後の日は行けたんじゃないの?」
『そうだけど~、病院行きたかったしさ』
(母の出勤時間は15時だ。病院寄っても十分間に合うはずである)
『なんか、めんどくさくなっちゃって』
(やっぱり…か)
「で、医者はなんだって?」
『何も。精神的なものでしょう、って薬もくれなかった。もう、何ともなかったしねぇ(笑)』

きっと、それは真実だろう。もうすぐ「仕事が終わる」という事は、もう働きたくないと思ってはいてもずっと仕事をしてきた母にとっては不安だったのだろう。それを、認識する前に体に出てしまったのだろう。
…というようなことを、母に電話で話したが、もう全く聞いてはいなかった。そして、
『でさ、どうする?どこ行く?』と、いつものように、約束もしていないのに当たり前のように言われた。
「いや、ごめん。今日、熱があるから1日寝てる」というと、あきらかに不機嫌そうな声で、
『あっそう』と一言。じゃあ寝るから、と電話を切ろうとすると、
『でね…』と、その後のお店のことを語り出した。

お店で働く人たちには、パートさんもいるので、毎日同じ顔が揃っているわけではない。
31日に入らない人は、30日に母への餞別としてお花やらお菓子やら、用意して下さってたという。
もちろん、31日に入る人は当日同じように用意して下さっていたのである。
だが、二日とも母は来なかった。
皆さん、本当にありがとうございました。そして、大変失礼いたしました。
それもさることながら、母は雇い主である旦那さんや女将さんにも挨拶なしで退職となってしまっていた。
なので、取り置いてくれているという餞別の品を受け取るべく、そしてお世話になった旦那さんたちにご挨拶するべく、母はもう一度職場へと出向いていった。
ところが、11月1日から家族旅行にお出かけとのことで、またもや挨拶できなかったのだ。
いやはや、本当にすみません。

そして翌日の4日、ご家族の帰宅にあわせてもう一度6日に挨拶に行くと母から電話がきた。
挨拶がすんだら、母の友人ら数人とお客としてお蕎麦を食べるのだ、という。
私も母が在職中に一度はお店に行こうと思いながらそのままだったので、ご挨拶がてら母たちと同行することにした。
が、その翌日5日の夜に母から電話があり、
『なんか雨みたいだからやめるわ』という。
なんですと?私にもそれなりに予定があったが、万障繰り合わせて時間をとったのに・・・。
いや、ご友人の皆さんの都合はどうなるの?と驚いたが、まあ母の行動は毎度この通りなのである。
---思い立ったが吉日---
私を含めて、あえて異議をとなえる人間など居ないのだ。だって、聞いてないし。

とまあ、そんなこんなで7日の月曜には、やっとご挨拶ができたようだ。
こんな風に職場を去っておきながら、女将さんには某ブランドのハンドバッグを、大女将さんには財布を頂戴したのだそうだ。これも、母の人徳なのか?女将さん方、気前が良すぎですからー。
しかも、大女将さんから戴いた財布には、現金2万円が入っていたそうな。やる事が粋ですな。
いやしかし、これはホントに改めてお礼に伺わねば。 

母の引退は恐れていた日ではあったが、同時に小さな喜びがもたらされる日でもあった。
ああ、これでもう仕事帰りにウチにいきなり寄られることはなくなるんだなぁ、ってこと。
でも、甘かった。
11月に入ってから、母は毎日のようにウチを訪れている。
といっても、私が居ない時間が半数以上ではあるのが救いだが。おうちごはんに、よく母が持ち込む食材の事を書いてあるが、今日は明太子、今日は牛肉、と1日に1品という形で持ち込んでくる。
そう、つまりはヒマなのだ。しかも、まだ定期が残っていて交通費がかからないというところがミソ。
先週末も2日とも付き合うハメになった。
日曜は出かけない、と言っておいたにもかかわらず昼に電話がきて『で、何時にする?』ときた。
土曜日に「話す人も居なくて、口も聞いてない」なんて言われたら、断れないじゃないか。。。
定期が切れるまでの辛抱、と心に刻み、私の週末は幕を閉じた。

最後まで読んで下さった方、お疲れ様でした&ありがとうございました。
この記事は、こんな風体でまとめてみましたが、私にとってそれなりに感慨深いことでしたので、長々と書かせていただきました。これからは、ママネタも増えると思われますが、宜しくお願いしますm(__)m


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ufufunofu

お母様もSAMEDIさんもお疲れ様でした。
ウチは同居ですから突撃されることはないですが、待ち伏せされますよ^^;帰るとリビングに鎮座して待っていることがままあり、相談なのか愚痴なのか世間話なのか・・・なんとも分類しがたい母が誰かに話さずには居られない話を聞かされることになるんですが、その場合はこちらが残業して疲れているとか、夕食をまだ食べていないとかいうことには関心が無いわけで==;
しっかり者の嫁さんで通ってきた母。こんな人だったっけ?と思うこともしばしば。いつまでたっても子供は子供。そう言いながら、もういい年した娘の前で賢母の衣を少しずつ脱ぎ始めているのかもしれません。
親は元気で居てくれることが何よりですよね。
by ufufunofu (2005-11-22 09:49) 

ごまかん

お母様、引退されたのですね。お疲れ様でした。
うちの母も今年の2月で定年を迎えたばかりなんですよ。
ちょうど私も帰省していて、送別会のお迎えに行くと、
職場の皆さんに囲まれて笑っている母にうるっときてしまいました。
『しばらくのんびりするわ。遊びに行くから。』とか言ってたのに。。
いつのまにかまた働きはじめてました。
看護士をしてるんですが、母の天職なのかもしれません。
ほんとに元気に居てくれるのがいちばん嬉しいですね^^
by ごまかん (2005-11-22 11:21) 

働き者のおかあさま、お疲れ様でした(^^)きっと、ヒマをもてあましておられますよ。私の継母も保健婦とケアマネジャーをしてたので先日まで働いていましたが、父の具合が良くないので介護に専念すると言って離職してしまいました。とにかく元気が一番、お元気でいてくださることを感謝しなくちゃいけませんよ~(^^)
by (2005-11-22 12:31) 

山猫庵

え~っと…お疲れ様でした(ダレが?)(^_^;)
by 山猫庵 (2005-11-22 15:37) 

SAMEDI

長文にもめげずお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

ふぅ 様
リビングで待ち伏せですか(笑)
ふぅさんが帰ったら、あれも話そう、これも話そうと首を長くして待っているんでしょうねぇ。

ゴマフ 様 nice!ありがとうございます。
看護士さんとは、精神的にも肉体的にもハードなお仕事ですよね。
定年されてもなおも職につくぐらい、お母様にとっての天職、そしてやりがいのあるお仕事なのでしょうね。元気に続けられると良いですね。

ぽとす 様 nice!ありがとうございます。
ぽとすさんのところも医療関係なのですね。でも、それならお父様はプロにケアして貰ってるわけですね。お父様もご家族も安心でしょう。
ウチの母は大きな病気もしたことがないので、ほんとにそれには感謝してます。

山猫庵 様 nice!ありがとうございます。
もちろん、私が、でしょう(笑)
私がつかまらない昼間は、自転車で近所をウロウロしているようです。
by SAMEDI (2005-11-24 00:51) 

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